読書会というのは主催者の好みがハッキリと反映される。
『どんな本でも大丈夫です!』と募集文面に謳われていても
実際には好まれる本と好まれない本がある。
当時私が顔を出していた読書会では
“ビジネス書至上主義” が暗黙のルールになっていた。
小説を持ってくる人も居たが、「フーン」で終わってしまっていた。
古典も同様だった。「はい、次の方」で終わってしまっていた。
なんだかそれが、私には少し寂しい気がした。
小説……いや、書籍はすべて何かしら得られるものがあるはずだ。
そう信じたかった。
ある時、どうしても紹介したい小説があった。
しかも、シリーズもの。全15巻のうちの第10巻というニッチぶりだ。なんとも無謀である。準備しても「フーン」というのはとても悲しいので、どうすれば良いのか2日ほど考え込んだ。
そして閃いた。
上手くいくか分からないけど、1度発表してみよう。
失敗したらまた翌週からビジネス書に戻せばいいか。
いつもの通りメモにまとめ、練習をしてから次の読書会に臨んだ。
「今日持ってきたのは○○全15巻のうちの10巻です」
そんな出だしから喋りだす人、私以外に見たことがない。
なかなかクレージーだ。
「この10巻で主に取り上げられているのが○○というストーリで
高い技術を持ちながら、『実績がない』と礼遇されてしまう登場人物が出てきます」
私は続けた。
「彼は諦めずにその技術を磨き続けました。ある時チャンスが訪れます。実績のある方法が通用しなかったときに彼の出番が出てきました。そして成果を出しました」
一呼吸置いて、次の言葉を発した。
「仕事でも同じではないでしょうか」
この後、聴衆の目が真剣になった。
「仕事でも同じではないでしょうか? すぐに通用するスキルばかり追い求めない。
自分の強みがあるのなら、しっかり磨く。
来るべきを待つという周到さと忍耐力は、小説のなかだけでなく、我々の仕事の姿勢にも通じるものがあると思います」
以上。
その後、立て続けに質問を受けた。
フリートークの最期には、「自分、この本を読んでみたくなった」「あ、私も!」という声までかけて貰うことができた。
ビジネスマンにとって有益なのはビジネス書だけとは限らない。
小説からも、何からだって吸収することができる。
そう学ぶことができた日だった。
今日のひとこと
・ビジネスマンにとって有益なのはビジネス書だけとは限らない。小説からも、何からだって吸収することができる。