
はじめに:読書で物識りにはなれないけれど人生に退屈しない
すごく面白かった!
本書は楽しく読める人、退屈に感じてしまう人、
ハッキリ分かれる本だと思います。
●向いていない人
→ 読書は実用性第一。無駄な本は読まない!という人
●向いている人
→ 読書が生活に役立っているか分からないけれど、
知的好奇心を満たすべく本を読みたい!という人
というのも、冒頭の「はじめに」から非常に正直な意見がでてきます。
正直に、はっきり申し上げます。
p-8 はじめに
(読書をして)聖人にも、悪人にも、また偉い物識りにも、なれません。
ただ一つ、メリットと言えば、人生に退屈せずに済んだことです。
ただし、実績ではなく、可能性ということに目をむければ、読書には大きな可能性が秘められています。
すぐに役立つ知識はすぐに時代遅れになる、
すぐに使えない知識は、忘れたころに力になる
という言葉を聞いたことがあります。
荒俣先生の読み方はまさに後者なのだと思います。
内容
都市伝説から博物学まで、まさにマニアックな研究をされている荒俣先生。
本のチョイスも非常に乙です。
腹の虫の研究

-日本の心身観をさぐる-
(南山大学学術叢書)
本書で紹介された本のうち、
私が特に気になったのが
「腹の虫の研究」
正体不明の病気は
平安時代ごろでは憑き物とされていました。
室町時代くらいから中国より虫の医学が輸入されました。
腹で虫が鳴いている
虫の居所が悪い
虫が好かない
などなどが真剣に医学として研究されていた時代があったようです。
このお話のくだりは、本を連鎖的に読むことの重要性を説いた章で
江戸時代の医学を研究
→恋の病も病気として研究されていた
→正体不明の病気は虫が原因
このような流れで面白い本に行きついた、という例なのですが
他の読書術の本では見られない、ユニークな本の例ですよね。
電子書籍で紙の本はなくなるのか問題
電子書籍の台頭で、紙の本は絶滅してしまうのか?
これはよく言われている問題ですよね。
さて、本書で紹介されたのが
「もうすぐ絶滅するという紙の書物について(エーコー)」です。
この観点がこれまた面白い。
紙の本が大事になってくるのです。(中略)
この二人が紙の本と言っているのは、最近の安手の本や文庫本ではないのです。
p-112 本を好きになるとはどういうことか?
中世写本、ルネサンス期のインンキュナブラ、初期活字印刷本(中略)
一冊100万円以上の稀覯本ばかり。
誰もが大切にしますし短命なデジタル本より長生きするに決まっています。
ああ もう 納得するしかないです。
まとめ・感想
読書の醍醐味は、勉強のためや仕事に役立てることなどではなく
知的好奇心を満たすことが一番だと私は思います。
ひたすら ”おもしろさ” を追求する筆者の読書姿勢には、
非常に共感が持てます。